みゅーじかるなえっせい anju:

あす、なろ

 

それは

まだその道を

どこかに喩えようもない

新米ドライバーが

栴檀山の天辺をめざして

いうなれば

無謀な試みをしたときのことです

その男は

無鉄砲に憧れているくせ

厄介なことには

なんとかなるという感覚を

ほとんどもっていない輩でした

いい加減という意味が

「良い加減」に追いつかない愚かさで

所謂、余白の足りない男です

気の毒なことには

几帳面さが裏目にでて

些細なことにもたいそうな取り乱しよう

ご愛嬌というのがせめてもの救いでした

だからこそ

いまさらの無鉄砲を

試してみたかったのかもしれません

それは

いまさらの「はじめて」を

渇望していたからです

余白を探すことにきづいたのでしょう

その男は

狭く、険しい山道を

さながら

今までのように感じながら

慎重に進まなければならないことも

不測に襲われかねないことも

すべてをこれからのように感じながら

それでも

やがて

男は唇をゆるめ

ささやかな無鉄砲から

未知を楽しむというそれに

にやけることが出来たのでした

おそらくは

ここに来なければ

逢うこともない「はじめて」のはずでした

助手席からは

「いいじゃないか このまま行けよ」と

とても 何気なく口をついたひとことが

その男には

おおいなるエールでした

ゆっくりかまえろよ

いいじゃないか このままゆけよ

                    T.ARA